マグロのカルパッチョ(マルタ/セント・ポールズ・ベイ)


 ーパーでも見かけるマルタ産の地中海マグロ。普段は冷凍だけれども、生マグロは絶対旨いに違いない。ヴァレッタのバスターミナルで、そんなことを思いながら、今晩の夕食を考えていた。
 地物だから安くいただきたい、そうなるとリゾート地のヴァレッタやスリーマじゃない。宿はマルタ島の西の端で、ホテル以外は何もない。そう言えば、今朝ヴァレッタに来る途中で、2つくらい大きな町を通っていて、2つ目の町では車窓越しに魚屋を見た気がする。
 そんなことで、セント・ポールズ・ベイの大通りでバスを降りた。通りの両脇は、アパートに交じってスーパーマーケットだったりパン屋だったり、ピッツェリアがところどころあって、かえって生活感が新鮮だった。
 朝見かけた魚屋の看板が目に入ったので覗いてみる。冷蔵庫は空になっていて、もう閉店らしい。さてどうしようか、と思って通りの2軒先にレストランがあるのを見つける。軒先のメニューを見ると、ツナのカルパッチョと書いてある。夕食が決まった。
 ウェイターが長方形の皿を置いて、「左がファッティ(トロ)、右がレッドミート(赤身)」と説明してくれる(言われなくても分かっている、と野暮な返しはしないことにした)。
 「本場のカルパッチョは牛肉を使うものであって、マグロやサーモンを使うのは和製イタリアン」そんなことを誰かが言っていた気がするけども、どうでもいい気がする。とても旨かった舌の上で、オリーブオイルに塗れた塩粒とマグロが滑る。歯触りはしっかりと、それでいて筋張らず。塩を効かせたトロの脂の甘み、オリーブオイル越しの赤身の仄かな酸味に笑みがこぼれる。
 後日、日本への帰路、空港で塩とオリーブオイルが山と売られているのを目にした。新鮮な地物はマグロだけではなかったかもしれない。



●とき
 2016年9月22日
●ところ
 セント・ポールズ・ベイ、モスタ街道(大まかな住所については末尾参照)



●もの
 地中海マグロのカルパッチョ(トロと赤身)

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