砂浜とビールを独り占めにした話(マルタ/メリッハ)

 ラダイス湾、冗談のような名前だけれども、本当だった。朝の9時。まだヴァレッタやスリーマからの観光客がたどり着かない時間に、パラダイスベイ海水浴場に向かう。海水浴場は、急峻な崖に囲まれた入り江になっている。崖の淵から覗いてみる。
 「貸し切りだ!」
浜の売店だけは開いているけれども、砂浜には人影一つない。喜び勇んで、入り江の階段を下りて売店に駆け込んで、チスクビールを買う。躍り出る。タオルを広げて、浜に陣取る。
くどいようだけれども、砂浜を独り占めしたのだ。ただただ一人、この入り江の先客だった売店の主人は、店の支度に集中していているから、これは考慮しなくていいことにした。この僕、男一人、日光浴も海水浴も周りの目を気にせず存分にできるけれども、まずはビールに手を付けることにした。
 文字通りのパラダイスは鮮烈だった。それから半年後の話だけれども、この年の冬、インフルエンザの高熱のなか、このパラダイス湾の光景が目に浮かんだ。



●とき
 ‎2016‎年‎9‎月‎23‎日
●ところ
 マルタ島、メリッハの町のずっと奥、パラダイス湾(住所はグーグルマップにも判別がつかないらしい)
●アクセス
 ヴァレッタ方面からなら、チルケッワのフェリーターミナル行のバスに乗って、フェリーターミナルの一つ前、マルファの停留所で降車。折り返して、チルケッワの浄水場(海水の淡水化場)の角を右折、道なり1キロほど坂を上ると入り江の淵にたどり着く。
●こと
 男一人で海水浴、ただし貸し切りビール付き

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