世界で一番美しい広場(ベルギー/ブリュッセル)

 リュッセルの真ん中、グランプラスを「世界で一番美しい広場」と言ったのはヴィクトル・ユーゴーだそうだ。またまた、そんな大げさな、と前評判は鵜呑みにしないことにした。けれども、ブリュッセルに着いた翌朝、路地裏を抜けて広場に足を踏み入れた途端、時差ボケが覚めた。確かに、これは世界で一番美しい。
 市庁舎が朝日を照り返していて、広場はまぶしかった。ただ、それだけなら、「世界で一番美しい市庁舎」であるべきで、本当の実感は広場を一周してからだった。
 白い石壁を金細工で飾った建屋が市庁舎を囲んでいる。元のギルドハウスだそうだ。各ギルドが互いに贅を競い、飾りを張り合った結果、いつの間にか広場全体が白地に金で出来上がったらしい。市庁舎とその対面、スペイン政庁舎だった「王の家」を含めて、優に20は豪奢な建物があったと思う。市庁舎の美しさだけならミュンヘンも負けてない、でもブリュッセルのグランプラスは、いわば政官財がしのぎを削って豪華な広場を造ったのだから、大抵の街はかなわない。そう思う。
 冒頭登場したヴィクトル・ユーゴーは、ルイ・ナポレオン、つまり後の皇帝ナポレオン3世のクーデター事件から逃れて、ブリュッセルで亡命生活を送っているのだけれども、その、ブリュッセルの下宿先がこのグランプラスにあったそうだ。贅沢すぎる亡命生活だな、と思うけれども、大佛次郎曰く、ブリュッセルに着いた翌日から、ナポレオン3世一派を批判する記録小説を書き始めたということだから、あまりグランプラスを楽しんだという訳でもないかもしれない。
グランプラスとその周辺は土産物屋とレストランが集積していて、ブリュッセル滞在中、朝に昼に夜にと訪れている。それぞれの店の話は別に書くとして、とにかく、この日、青空と朝日のグランプラスはとても綺麗で、それだけを話題にしておくことにした。



●とき
 2013年9月15日
●ところ
 ブリュッセル、グランプラス(大まかな住所は末尾参照)


●アクセス
 説明不要。ブリュッセルの一番真ん中。
●もの
 グランプラスの市庁舎とギルドホール
 「パリ燃ゆ(上巻)」大佛次郎

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