イングランドの「南の島」で朝食を(イギリス/ワイト島)

 ングランドの「南の島」に行ってきた。嘘ではない。朝、ロンドンを抜けてポーツマスでフェリーに乗り換え、その先、ローカル線で終点まで4時間。ひたすら南に、南に進んだその先に、シャンクリンの村はあった。
 駅前の通りから、遠目に海が見えた。どんよりしたロンドンが嘘のようだ。青空の下、強めの朝日を浴びる。外房の勝浦か、南房総の館山か、手近な別荘地の趣だ。
 駅は、こじんまりとしていて単線だけれども、誇らしげにナショナルレイルの駅看板が出ていている。タクシーが、30分から40分後にやってくるはずの次の列車の客待ちをしている。
 駅前には、田舎なりに商店街があった。さしづめ、「シャンクリン銀座」といったところだろうか。土曜日の朝9時半過ぎ。村は目覚める前のようで、空いている店もなく、車や人の通りもほとんどない。
 唯一、駅の向かい側に、緑色で南国風の外観をした「タンブラーズ・カフェ」という喫茶店が開いていた。そういえば朝食をまだ食べていない。今回の英国旅行では、「豆のケチャップ煮」を回避してきたけれども、そろそろ年貢の納め時かもしれない。カウンターで「朝定食」でも「モーニング」でもない、「ブレックファスト」を注文してみる。
 「南の島」でも、ここはブリテン諸島の端くれ。案の定、ブリティッシュ・ブレックファストがやってきた。強めに焼いたパン(固くて焦げかけだけれども濃いバターにはこれくらい香ばしくてもいい)、目玉焼き(まず外れはない)、トーストしたトマトとマッシュルーム(旨い)、こんがり焼けたソーセージとベーコン(もちろん旨い)、そして、定番―いかなる朝食にも付きまとう―豆のケチャップ煮
 早起きした空腹のせいか、店の腕前か、豆のケチャップ煮を回避し続けたおかげでまだ飽きが来てないせいか、ぺろりと平らげることが出来た。不思議なことに、旅の最中毎朝出くわすとうんざりする日もあるけれども、食べなければ食べないで、イギリスに来た感じがしない。豆のケチャップ煮とはそんな存在なのだと思った。
 食後、まだ動かないシャンクリンの村を眺めつつ、ミルクティーをゆっくり飲みながら、次の電車までの時間をつぶす。この後、島の保存鉄道に乗って、そのあとヴィクトリア女王の別荘に行ってもいいかもしれない。ポーツマスに戻ってHMSヴィクトリー号を見て、トラファルガー海戦に思いを馳せてみるのも捨てがたい。乗り物ならホバーボートもあったはずだ。いや、サウサンプトンだって古い港市で、タイタニックの出港地だから何かがあるかもしれない。今日は何をしようか。



●とき
 2012‎年‎9‎月‎15‎日
●ところ
 ワイト島、シャンクリン、リーゼント通り(大まかな住所は末尾参照)



●アクセス
 アイランド線の終点シャンクリン駅からすぐ。
●もの
 カフェ「タンブラーズ・カフェ」の朝食

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